駅へと向かう道すがら。黒い影が目の前をひらりと横切りました。白のシンプルなラインが入っている、鮮やかな赤い頭をしたお洒落な昆虫。ホタルガはそのままヒラリヒラリと舞いながら、住宅街の中に消えていきました。 チョウ目マダラガ科の2.5㎝から3㎝ほどのホタルガは、日本各地の平地や山地で昼間に活動する蛾です。5月から7月、9月から10月にかけて、成虫の姿を見ることが出来ます。その名の通りホタルに擬態している昆虫で、赤い頭に黒い体が特徴です。ホタルには刺激を加えると嫌なにおいを出す種類がいるため、ホタルガの擬態の対象となっているようです。 夜のイメージが強い蛾が昼間に活動しているせいか、それともシンプルながらも目立つ配色をしているせいか。一度ホタルガが視界の中に入ると、自然と目線がそのヒラヒラと飛ぶ姿を追いかけてしまいます。抜けるように高く、透明感ある秋空の下だというのに、その姿は夜のしっとりとした空気間を纏っているようにも感じられました。見慣れたはずの駅へと向かう風景の中で、視線を縫い留めるその姿を見かけたときは、何だか得をしたような気分になれます。 そろそろ時期的にホタルガの姿は見られなくなってきます。見かけた際には、ヒラリヒラリと舞うお洒落な姿を楽しんでみてください。 K.